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疾患情報

小児喘息 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012

監修 濱崎 雄平 先生(佐賀大学医学部 小児科 教授)

小児気管支喘息の治療目標

最終的には寛解・治癒を目指すが、日常の治療の目標は、

症状のコントロール
  • β2刺激薬の頓用が減少、または必要がない。
  • 昼夜を通じて症状がない。
呼吸機能の正常化
  • ピークフロー(PEF)やスパイログラムがほぼ正常で安定している。
  • 気道過敏性が改善し、運動や冷気などによる症状誘発がない。
QOLの改善
  • スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる。
  • 治療に伴う副作用が見られない。

喘息コントロール状態の評価

評価項目 コントロール状態
良好
(すべての項目が該当)
比較的良好 不良
(いずれかの項目が該当)
軽微な症状 なし (≧1回/月)<1回/週 ≧1回/週
明らかな喘息発作 なし なし ≧1回/月
日常生活の制限 なし なし(あっても軽微) ≧1回/月
β2刺激薬の使用 なし (≧1回/月)<1回/週 ≧1回/週
*1:
コントロール状態を最近1か月程度の期間で判定する。
*2:
軽微な症状とは、運動や大笑い、啼泣の後や起床時に一過性に見られるがすぐに消失する咳や喘鳴、短時間で覚醒することのない夜間の咳き込みなど、見落とされがちな軽い症状を指す。
*3:
明らかな喘息発作とは、咳き込みや喘鳴が昼夜にわたって持続あるいは反復し、呼吸困難を伴う定型的な喘息症状を指す。
*4:
可能な限りピークフロー(PEF)やフローボリューム曲線を測定し、「良好」の判定には、PEFの日内変動が20%以内、あるいは自己最良値の80%以上、1秒量(FEV1)が予測値の80%以上、β2刺激薬反応性が12%未満であることが望ましい。
*5:
評価に際し、最近1年間の急性増悪による入院や全身性ステロイド薬投与などの重篤な発作、あるいは症状の季節性変動など、各患者固有の悪化因子(リスク)を考慮して治療方針決定の参考にする。

コントロール状態による長期管理の進め方

コントロール状態による長期管理の進め方

*1:
コントロール状態の評価に際しては、服薬状況や吸入方法、環境整備などに関するアドヒアランスを確認し、必要ならば適宜、患者教育を行う。
*2:
良好な状態が3か月以上安定していることが確認されるまで治療内容を維持する。
*3:
比較的良好と判定される状態が3か月以上持続する場合は治療が不十分と判断しステップアップを検討する。
*4:
患者教育(*1)による改善効果が期待できる場合には、治療内容をステップアップをせずに維持してもよい。

現在の治療ステップを考慮した小児気管支喘息の重症度の判断

  • 喘鳴や呼吸困難を伴う定型的な喘息発作を認めず、運動や睡眠など日常生活の制限がない。
  • 運動や大笑い、啼泣などによって一過性に認められる咳や喘鳴、あるいは感冒罹患時などに見られる咳の遷延や軽度の息苦しさなど、気道過敏性亢進状態の残存が疑われる症状がない。
  • β2刺激薬の使用がない、あるいはβ2刺激薬の使用により改善する症状を認めない。
  • JPAC、C-ACTなどの点数が満点である。
  • ピークフロー(PEF)の日内変動が20%以内、あるいは自己最良値の80%以上を維持している。
  • フローボリューム曲線測定による1秒量(FEV1)が予測値の80%以上、β2刺激薬吸入に対する反応性が12%未満である。
ただし、過剰な薬物治療となっていないか注意が必要である。

長期管理における薬物療法の開始

コントロール状態による長期管理の進め方

長期管理における薬物療法の開始

少な目の薬剤で開始して良好なコントロールが得られるまで徐々に薬物の増量を図るよりも、早期に十分な効果が得られたのちに良好な状態を維持できる必要最少量まで徐々に減量するほうが、患児の生活の質(QOL)の向上のためには好ましいと考えられる。

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(6〜15歳)

  治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
基本治療 発作の強度に応じた薬物療法 吸入ステロイド薬(低用量)*2
and/or
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
吸入ステロイド薬(中用量)*2 吸入ステロイド薬(高用量)*2
以下の併用も可
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
  • テオフィリン徐放製剤
  • 長時間作用性β2刺激薬の併用あるいはSFCへの変更
追加治療 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
テオフィリン徐放製剤(考慮) ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
テオフィリン徐放製剤
長時間作用性β2刺激薬の追加あるいはSFCへの変更
以下を考慮
  • 吸入ステロイド薬のさらなる増量あるいは高用量SFC
  • 経口ステロイド薬
DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
SFC:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤
*1:
その他の小児喘息に適応のある経口抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2:
各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
  低用量 中用量 高用量
FP、BDP、CIC 〜100 〜200 〜400
BUD 〜200 〜400 〜800
BIS 〜250 〜500 〜1000

FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BUD:ブデソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液

(1)
長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止するのを基本とする。
(2)
SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。SFCと吸入ステロイド薬の併用は可能であるが、吸入ステロイド薬の総量は各ステップの吸入ステロイド薬の指定範囲内とする。
(3)
治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は小児の喘息治療に精通した医師の下での治療が望ましい。
(4)
治療ステップ4の追加治療として、さらに高用量の吸入ステロイド薬やSFC、経口ステロイド薬の隔日投与、長期入院療法などが考慮されるが、小児の喘息治療に精通した医師の指導管理がより必要である。

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(2〜5歳)

  治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
基本治療 発作の強度に応じた薬物療法 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
and/or
吸入ステロイド薬(低用量)*2
吸入ステロイド薬(中用量)*2 吸入ステロイド薬(高用量)*2
以下の併用も可
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
  • テオフィリン徐放製剤
  • 長時間作用性β2刺激薬の併用あるいはSFCへの変更
追加治療 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
  ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
長時間作用性β2刺激薬の追加あるいはSFCへの変更
テオフィリン徐放製剤(考慮)
以下を考慮
  • 吸入ステロイド薬のさらなる増量あるいは高用量SFC
  • 経口ステロイド薬
DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
SFC:サルメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤
*1:
その他の小児喘息に適応のある経口抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2:
各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
  低用量 中用量 高用量
FP、BDP、CIC 〜100 〜200 〜400
BUD 〜200 〜400 〜800
BIS 〜250 〜500 〜1000

FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BUD:ブデソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液

(1)
長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止するのを基本とする。長時間作用性β2刺激薬ドライパウダー定量吸入器(DPI)は自力吸入可能な5歳以上が適応となる。
(2)
SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。SFCと吸入ステロイド薬の併用は可能であるが、吸入ステロイド薬の総量は各ステップの吸入ステロイド薬の指定範囲内とする。SFCの適応は5歳以上である。
(3)
治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は小児の喘息治療に精通した医師の下での治療が望ましい。
(4)
治療ステップ4の追加治療として、さらに高用量の吸入ステロイド薬やSFC、経口ステロイド薬の隔日投与、長期入院療法などが考慮されるが、小児の喘息治療に精通した医師の指導管理がより必要である。

小児気管支喘息の長期管理に関する薬物療法プラン(2歳未満)

  治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4
基本治療 発作の強度に応じた薬物療法 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
吸入ステロイド薬(中用量)*2 吸入ステロイド薬(高用量)*2
以下の併用も可
ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
追加治療 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
and/or
DSCG
吸入ステロイド薬(低用量)*2 ロイコトリエン受容体拮抗薬*1
長時間作用性β2刺激薬
(貼付薬あるいは経口薬)
長時間作用性β2刺激薬
(貼付薬あるいは経口薬)
テオフィリン徐放製剤(考慮)
(血中濃度5〜10μg/mL)
DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
*1:
その他の小児喘息に適応のある経口抗アレルギー薬(Th2サイトカイン阻害薬など)
*2:
各吸入ステロイド薬の用量対比表(単位はμg/日)
  低用量 中用量 高用量
FP、BDP、CIC 〜100 〜200 〜400
BIS*3 〜250 〜500 〜1000

FP:フルチカゾン
BDP:ベクロメタゾン
CIC:シクレソニド
BIS:ブデソニド吸入懸濁液

*3:
6か月以上すべての年齢
(1)
長時間作用性β2刺激薬は症状がコントロールされたら中止するのを基本とする。経口薬は、12時間持続する1日2回投与の薬剤とする。
(2)
テオフィリン徐放製剤は6か月未満の児に原則として対象にならない。適応を慎重にし、痙攣性疾患のある児には原則として推奨されない。発熱時には一時減量あるいは中止するかどうかあらかじめ指導しておくことが望ましい
(3)
治療ステップ3以上の治療は小児の喘息治療に精通した医師の指導・管理のもとで行うのが望ましい。
(4)
治療ステップ4の治療は、吸入ステロイド薬も高用量であるため、十分な注意が必要であり、小児の喘息治療に精通した医師の指導・管理のもとで行う。